サンマ②

8月半ばのこと、1番の中で7人ばかりの会合での話です。「秋刀魚たべたかい?」「ん?刺身で二回」「私は3回かな」今年は旨そうな秋刀魚の入荷が遅かったせいか、いつもの年に比べて食べた回数が少ないような気もします。

腸の話になると食べるのは3人になりました。「苦いというか、甘いというか、大根おろしとのコラボレーション(外国語嫌いの私が、こんな所でつかっていいものか)がたまらないネ」と鼻の穴を広げて言うと、腸を食べない一人が「ウロコがはいっているから食べない」とも「苦いから」とも、食べ物の好き嫌いは個人差があって強制はできませんが、ウロコが腸に入った秋刀魚に当たった人には秋刀魚を嫌いになる理由になるかもしれません。ボーケ(棒受網)で獲った秋刀魚は、網の中でもまれて、ウロコが落ち、そのウロコを呑み込んだ魚で、その魚を当てた人は宝くじを買って下さい。きっと当たるかも。私はここ10年位、ウロコを食べた秋刀魚に当たったことがないのです。こんな事で秋刀魚を嫌いにならないでください。私の口からいうまでもなく脂がのった秋刀魚は按摩(差別用語かな)泣かせと言われるほど栄養が高いのです。20代の女性の86%が悪性貧血といわれていますから、血合に含まれるビタミンB12は貧血にはもってこいですし、トリ目を予防するビタミンAは牛肉ロースの12倍というデータもあります。

この秋刀魚を「兼題」に8月の魚河岸俳句会が8月25日銀鱗会で開催されました。決められた題で俳句を作ることを「題詠」といい、あらかじめ出しておく題を「兼題」といいます。大体「季語」がそれきあたります。毎月、五句の投句の内、ニ句を兼題の魚にあて、全員で選句した上位ニ句が魚河岸俳壇に載ります。選ばれた句を中心に意見を述べ合う「合評」をして終えます。選から漏れた句でもそれは良い句があって、魚河岸で働く人の心意気が伝わってきます。

今回、魚食普及の一助にもなると思い紹介します。

「細くとも脂なくとも秋刀魚好き」「勇気だしサンマ三匹河岸で買う」「さんま食べ思いは常に三陸へ」「食卓の主役に抜擢焼きサンマ」「腸苦し大根おろしも又うまし」「ふっくらと手に有り余る秋刀魚かな」「じわじわと音する秋刀魚網の跡」

《最後に歳時記より》

秋刀魚焼く匂ひの底へ日は落ちぬ 加藤楸邨

さんまよりカツレツが好き子が育つ 尾村馬人には

火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり 秋元不死男

魚河岸俳句会だからといって魚の句を強制するわけではありませんが、自然と増えてくることは否めません。馬人先生存命時の旧会員の方も、再入会して、我々若い会員を叱咤して下さい。勿論初心者の方も一緒に勉強しましょう。