“下付け”から始まって”せり””店出し”

傷みやすい鮮魚を扱う業会でもあり、また機敏な判断と動作が必要な商売でもあったのでしょう、江戸時代か、受け継がれた気の気風が生まれて、育って、とにかく近海物業会は天気がよかった時代でした。しごかれていくうちに段々声も出てきます。腰を屈めて、樽の中の魚を両手で二尾とか四尾づつ数えていきます。唄うがごとく拍子をとりながら二そく(200尾)も勘定すると達成感というか、快感さえ覚えます。冬の真っ最中、二の腕まで真っ赤にして魚を数えた素養が、大きな声をだせるようになり、カラオケで調子よく歌えることにつながったのかと思っています。

最近では発泡スチロールの発達で入れ物も小さくなり、何kg、何尾と浜(又は船)から明確な表示がなされて、干を汚さずに取引されるようになりました。氷水の中の魚をゴムの手袋で触っている風景も見られます。亡くなった先人達が見たら、なんと情けない光景と。しかし、考えてみますとゴム手袋で魚を扱えば人間の温もりが伝わらずに魚のためには良いのではないかとおもったり、料理用の鋏で胸びれや腹びれを切るのも、その後、包丁を使いやすくするためには良い事ではとも思います。約束事や、しきたり等が薄れて、”なんでもあり”がまかり通るのが腹立たしく思える昨今です。大きな声の話が、あらぬ方角へ行ってしまって申し訳ありません。

三つ目のお客様の顔を覚える事は商売する上で大事な仕事だと思います。インターネットや電話でも商いは出来ますが、顔を見て、目を見て会話するのが取引の基本だと信じています。

「挨拶の出来ないヤツは”ロクなもんじゃねー”」

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