「花は桜木、人は武士、柱は桧、魚は鯛、小袖はもみじ、花はみよしの」と日本一のものを歌った一休上人の歌によって、鯛は魚の王様になった様です。それ以前、鎌倉時代には鯉や鱸が鯛の上の位にありました。

現在の日本で魚を一種類だけ選べといわれたら、誰でも「タイ」と答えるでしょう。いや、今の若い人たちは「マグロ」と答えるかも?

日本人の魚に対するイメージで何一つ欠点のない魚、マダイを今月は取り上げました。丁度桜の花が満開になる頃、外洋にいたマダイは産卵のため瀬戸内海に入ってくる、所謂「乗っ込み」の頃です。

マダイは一年を通じて「めでたい」「腐ってもタイ」と珍重される魚ですが、4月の春の鯛は「桜ダイ」と言われるだけあって、その体色の素晴らしさには私たちの目を楽しませてくれる自然の芸術品です。俎板に鯛をのせ、真水で洗ったら、包丁を持つ手を休ませて、5秒でといいから魚と対峙してみてください。何かしら見えてきます。

諺・俳句も多い桜鯛です。「タイも1人は美味しからず」

河豚の頃に出てきましたが、タイは美味しい魚だが、たった1人で食べたのでは味気もないものだと、いう意味。

「エビでタイを釣る」

わずかな元手で大きな利益をえること。

「五月陰暦の腐れ鯛」

五月の頃に取れた鯛は味が落ちるという意味。

「腐っても鯛」

優れた者はどんなに落ちぶれても価値は変わらないというたとえだ。

俎板に鱗ちりしく桜鯛子規

津の国のなに5両せん桜鯛 其角

津の国(大阪)では江戸の初鰹に対抗して5両出費しても惜しくないという。

からし酢にふるは涙か桜たい 宗因

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