タカべの巻

タカべは、本州中部から九州の太平洋岸の岩礁地帯に分布する日本固有の魚で、特に伊豆諸島や小笠原諸島近くに多く住んでいます。

月刊東卸に寄稿する私の話を読んでいただく皆様は、全ての方が魚を業としている職業人(英語でのプロと書けばいいのに私が横文字が嫌いなだけです)ですので、今さら個々の魚の旬とか産地とか食べ方等を書く気はないのですが、 “華””花”がなく、可哀想なので、八月は鰖の旬”まっさかり”ですので、鰖の話をかきます。

濃紺の魚に背側から尾びれに黄色の縦縞がストロボの光に反射してネオンサインの様に写った絵がよく見られたのを思い出します。テレビでの画面では華やかなのですが、いざ食べる段になると地味になってまうのです。

市場に入荷した段階で、この魚ほど値段のよし悪しの分かれる魚はありませんでした。同じ日に獲れた魚でも一方は金筋の入ったピカピカ、片方は鱗が落ちて白っぽくなったいかにも古そう(鮮度に変わりはないのですが)な魚。

光った方の鰖は建て切り網と呼ばれる独特の追い込み漁で獲った魚で、後者は刺網漁で獲った魚です。

追い込み漁は昔、沖縄の漁師さんがグルンク魚(タカサゴ)に用いた漁で、網を魚の道に入れて固定し、それに向かって大勢の漁師さんが潜って魚を追い込む漁です。魚のためには、魚体に傷がつかず、丁寧な獲り方ですが、いかんせん、潜る人がいなくなって、神津島や新島では、建て切り網を使用していない様です。伊豆諸島には定置網があるので他の島でも定置網で漁獲しています。

鰖の漁も次第に減少して市場への入荷量も減る一方です。というのは小さい魚、小型の鰖が売れなくなったからで、昔は”煮付け””塩焼き””背越し”など小さい魚でも立派な素材で食卓にのせたものでした。

秋刀魚と鰖は、大きなものから売れる”法則?か”が市場でも魚屋さんにもあった時代と比べると、鰖は、値段は高級魚ですが、夏の庶民のお惣菜から脱しきれずに、高級料亭の”お品書き”には乗らない魚です。そういうところが好きだな!ボクは!小骨が多い魚で、お店の割箸では食べにくいから、家庭で先の細い箸で食べる魚ナンチャッテ!私のひとりよがりか。

小さい時から塩焼きとおろし生姜に慣らされてきた私ですが、煮付けも背越しも旨いから試してみてください。

旬の短い魚で、昔は秋刀魚のでてくる前の”焼き魚”として東京の庶民の食卓の定番だったのですが、秋刀魚が早く出すぎて、本当に可哀想ですが、いつ食べても(短い時期ですが)脂がのって栄養満点な魚です。秋刀魚と鰖は腸を食え!

最後になりましたが、伊豆諸島は東京都です。東京都のさかなとして”鰖”を推薦します。