カマスの干物

 

暑い日が続きますね。夏だからあたり前の話で、日中の暑さには参ります。

暑さで思い出すのが、親父の小言で、「暑い、暑い」と母が零すと、「暑いといったって涼しくならないんだ。黙ってろ」私も傍で聞いていて、以来「我慢の人生」が続いています。

夏に向かって紹介する魚を探しました。太刀魚、鯖は書いたし、今年の鯵は今一つ旨い魚が無い様で、と思っていた所、店の魳が売れ残っていました。腹が柔らかなのが気になりましたが十匹程の魳を家に持ち帰って捌きました。全員が大きな卵を持っていて、仕方なく、腹開きで二匹を除いて干物にしました。二匹はその晩の塩焼きで食べようと。いつ食べても旨い魚と信じていたのですが、子持(卵を持った)の魚は、卵に栄養が行ってしまったのでしょう、期待していた程の味ではなかったのが残念でした。それに水っぽいのが気になりました。

築地の市場にはヤマトカマスとアカカマスが入ってきます。カマスの仲間にはオニカマスとかオオカマス等、恐ろしい魚がいますが、衛生検査所の厳重な監視があって市場には入れません。

夏が旬とされているのは「ミズカマス」と呼ばれているヤマトカマスで、アオカマスとも言われる通り体全体が青みがかった全長20cm位の、アカカマスより一回り小型の魚です。以前は小田原を中心とした相模の海から夏場大量に入荷した魚ですが、群魚での入荷がめっきり少なくなった様です。

アカカマスは市場ではアガマスの方が通りが良く、ずんぐりした体型で、断面は丸く、体の色は飴色で、鮮度の良いものは“美味しそう”と声が出そうな魚です。いつ食べても旨いカマスですが、マガマスの旬は「秋」です。前に述べました私の失敗談に沿って話します。

先ず鮮度です。鮮度の良いものを買いましょう。いや、鮮度の良い物を売るように心がけましょう。そして「旬」を、魚の旬を教える事です。

「カマスの焼き食い一升めし」の喩通り、食欲の秋に、カマスの塩焼きで温かいご飯を食べると、食べ過ぎる事は、私のような後期高齢者でも想像に難しいことではありません。カマスは鮮魚で食べるより、干物にした方が味が出る魚で、絶対に干物です。家庭で干物を作る方法としてカマスの開き肩は「背開き」です。頭は取っても姿は大きく見えます。それに開いたカマスの脊椎骨に沿った血を歯ブラシで綺麗に洗い落す作業を必ずすることです。寿命の延びたものは、女性と歯ブラシ、寿命が短くなったものは靴、歯ブラシを沢山使って「きれい」にしましょう。

干物やさんが「カマスは売れない」とこぼしていましたが、脂の乗ったサバ、ホッケ、アジ等に領域を侵されているカマスの干物が日の当たる場所に出てきてほしいものですね。

(追伸:干物は上手にでき、大変美味しかったです!)