サバの巻

10月は鯖です。いや秋鯖です。鯖の季語は夏ですが、秋鯖の季語は勿論、秋なのです。
マサバとゴマサバがあって、世界中の温帯・亜熱帯のほとんどの海域に生息しています。マサバは体がやや扁平な紡錘形で背側に「さば紋」と呼ばれる黒い波状の模様があり、平サバともいいます。魚を輪切りにしたときの形が楕円形で、この名が付きました。秋に脂がのって旬を迎えます。
一方、ゴマサバはマサバより体が小さく、側面と腹面にゴマを散らしたような斑点があり、体の断面が円に近いので「丸サバ」とも呼ばれ、旬は夏です。夏場にマサバより一時旨くなる時があります。その他に北部北大西洋に分布している「タイセイヨウサバ」が、ノルウエーなどから冷凍で輸入されています。1980年代に日本近海のサバが不漁の折、その代用として輸入されたものです。体はマサバによく似ていますが、背部の模様が「く」の字の黒い縞が明瞭なのと、輸入国名の表示で見分けられます。
小学生とそのお母さん、若い女性などを対象に調査したところ、一番嫌いな魚料理は“サバの味噌煮”という答えが返ってきました。そころが、お母さんたちの得意な料理のトップもサバの味噌煮なのです。サバ節が古くからおそば屋さんやうどん屋さんで汁用のだしとして使われている事もご存知のことと思います。このように日本人の食生活に溶け込んでいる鯖は100万トンを超えた豊漁の1970年代を最後に減少し始め、前述の1980年代の不漁期に、
一本が八千円也の秋の鯖
当時、私の作った拙い俳句です。
私の店で売ったわけではありませんが、築地の市場での相場でした。一匹の鯖の値段ですよ。2キロも3キロもあるわけでなし、せいぜいあって1.5kgでしょう。秋鯖です。値打ちがあったのでしょう。生のマサバを年間平均脂質含有量は17%ですが、晩秋には軽く20%を超えます。旨いはずです。
鯖を紹介する時、必ず話題になるのが、「秋サバ嫁に食わすな」という諺です。マサバは4月から6月の産卵期を過ぎると、夏には活発に餌を食い、十分栄養をとって脂肪も乗り最高の旬を迎えます。姑が独りじめしたくなるほどの旨さになるのです。何とも意地悪な嫁いびりのようですが、別の解釈もあって、秋サバには卵がない、つまり子種がないので、嫁が食べると子宝に恵まれないのではないかという子孫繁栄を望む親心ともとれます。
サバを含む青背の魚には成人病を防ぐ数々の物質が含まれています。
動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞にならないようにし、血流中の中性脂肪を減少させたりすることが知られています。最後に肌を綺麗にしたい方は、サバの尾に近い皮と身の間に、ビタミンB2が集中していますから、血合い肉も構わずに食べて、いつまでも若さを保ってほしいものです。
秋鯖や若狭生れの京育ち
妙女