血合肉

今月は血合肉の話です。

血合肉は色が黒っぽいことや、臭いがあったり、鮮度落ちが早いことなどから嫌われ者です。例えば魚売り場でもカツオの刺身やブリの切り身を買うとき、血合肉のなるべく少ないもの、それも血の鮮やかなものを選びたくなります。

なぜ今頃、血合肉かというと、生のマグロが多い時期だし、カツオの漁も増えてくることで、鮮度の良い時にこそ、血合肉を食べてもらうチャンスと、この稿を書き出しました。本当は「もったいない」という気持ちからなのです。なぜなら、マグロの血合肉は殆ど捨てられている(利用されていない)ようだし、料理屋せんのカツオの刺身には血合肉は付いていません。

血合肉はカツオ・マグロなど運動性の大きい魚類の骨のまわりに発達する濃紅色の筋肉で肝臓のような動きをするとか運動をコントロールするとか言われていたこともありました。電気生理学の研究から、魚が急に餌の生き物を追いかけたり、敵が来てあわてて隠れたりするような急激な運動には、普通筋が使われ、平常泳いでいる時には血合肉が使われることがわかりました。海を大きく回遊しているマグロ・カツオは血合肉が多く、また海の底に静かにしていて、餌をとる時に瞬発力を出すヒラメなど、短距離走型の魚には血合肉は殆どありません。

なぜ回遊性の赤身魚に血合肉が多いのかというと、広い海洋を猛スピードで泳ぎ回るには大量の酸素が必要となるため、その酸素を体内に十分補給・貯蔵するのに、大量のヘモグロビンやミオグロビンと呼ばれる赤い色素たんぱく質の働きが必要となるからなのです。血合肉にはこれら色素たんぱく質が大量に含まれているので、赤黒い色をしています。これらの色素にはヘム鉄と呼ばれる鉄が含まれていて、これは無機の鉄と比べて大変吸収が良いので栄養素の鉄の供給源として優れています。

特に成人女性で5割以上の人が鉄欠乏症状態であると言われ、若い女性には無理なダイエットなどによる貧血が多いと聞きます。

鉄分が不足すると「鉄欠乏性貧血」を引き起こし、動悸・息切れをはじめ食欲不振・無気力症などの症状が出てきます。その改善にはレバー料理を食べるように勧められますが、魚の血合肉を食べるのもひとつの方法と思います。魚介類では赤身魚の血合肉・肝臓にたくさん含まれていて、特に血合肉には獣肉の10倍近くもの鉄分が含まれています。

魚を嫌う人、特に赤身魚が嫌いという人は、この血合肉の生臭さがどうにも我慢できないようで、血合肉の部分を箸で取り除いて食べる姿をよく見ます。しかし血合肉の栄養価は非常に高く、カリウムや鉄分。ビタミンBの他、高度不飽和脂肪酸のDHA・EPAも豊富に含まれています。

味覚は個人によってずいぶん違いますから、自分の好きな魚を好きな調理法で食べるのが一番おいしい食べ方と言えるでしょう。血合肉は煮たり、照り焼きにするなどして調理法を工夫すれば、特有の臭みも和らぎますので、できるだけ食べるようにしたいものです。

ヘモグロビン(Hemoglobin)

血液中のヘモグロビン濃度が薄いことを貧血といいます。ヘモというのは色素、グロビンというのはたんぱく質のことで、血液中1㎗中にヘモグロビンが12g以下の場合は、貧血症状要注意ということになります。