魴鮄の生態

さて、本題に入ります。

魴鮄は冬から早春が旬とされる魚ですが、まだまだ美味しく食べられます。というよりも、周年獲れる魚でもあるので、特にる冬場が旨いと言われている白身魚です。魴鮄の仲間は、体が円筒形で頭部は骨板に覆われていて、胸鰭は大きく、下部の3本の軟条は肥厚して遊離しています。これら左右6本の軟条で歩くように餌生物を探して食べ歩きます。

多くの種類では、体が赤く、胸鰭の内側には種独特の模様があります。緑辺は青色で、内側は美しいグリーン色をしています。体が赤い色をしているので、特にそのグリーンが映えます。キンキの背鰭の内側の黒い紋様同様、一匹丸のままでないと見られない。“綺麗”を是非、お子さんに見せてあげたい魚の一つです。頭の形が兜を被った様で、胸鰭が鎧の肩当てに出陣の様を思わせることから祝い事に用いられたこともあったようです。

魴鮄の仲間に「カナガシラ」がいます。漢字で鉄砲魚、金頭と書きますが、せり場ではキントと親しく呼んでいましたっけ。姿・形は魴鮄そっくりですが、鱗が大きく粗雑な感じで、安っぽく見えて損をしている魚です。魴鮄に比べて体色の赤味が強いようですが、背面や胸鰭に斑紋がないことで区別されます。第1背鰭後半部に深紅色の大きな斑紋があるのも特徴の一つです。カナガシラの地方名に「義太夫語り」があります(鹿児島)。義太夫とは浄瑠璃節の一派。気張って真赤な顔で義太夫を語っている人に似た魚、という意味でしょう。

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