帆立貝は日本で一番消費量の多い貝です。寒冷性の貝で千島列島、サハリン、朝鮮半島北部に分布します。日本では北海道・東北が主産地ですが、富山県と千葉県が南限です。

前述の通り、殻は丸い扇形の2枚貝で、殻頂の左右に耳状の突起があり、左殻(普通は上)は紫褐色で右殻(白色)より深みが弱い。殻の内側は白色です。貝柱は1つですが、大きくて開閉の力が強く、活きのいい貝に指でも挟まれると大人でも怪我をします。

雌雄異体ですが、1年までは全て雄で、2年以降半数が性転換して雌になります。雌雄は閉殻筋(貝柱)の周囲にある三日月形の生殖巣の色で区別できます。卵巣は桃色や橙色、精巣は白色です。

誌上に流通している帆立貝の多くは養殖物です。養殖方法は、稚貝を放流して自然状態で育成する「地まき方式」と、籠に入れて地中に吊るして成貝まで管理する「垂下方式」とがあり、市場では前者を天然貝、後者を養殖貝と区別しています。

現在では陸奥湾を中心に年間20万t以上も養殖され、天然物の漁獲量を上回るようになってきました。天然物と養殖物を合わせた国内生産量は年々上昇し、1995年以降は50万t以上になっています。

帆立貝の旬は夏です。廃棄歳時記でも夏の季語になっています。貝柱の重さも春から夏に向かって増加し、8月に最大になり、9月以降は減少します。グリコーゲン量も同じ傾向を示します。

貝柱は甘味がってやわらかく、美味。刺身・寿司のほか、バター焼き・フライ・天ぷら・鍋料理など色々。冷凍貝柱・干貝柱も。外套膜は「ひも」や「みみ」と呼ばれ、塩辛やみりん干しなどに。

因みに、帆立貝の漁師による労働歌がもとになった「貝殻節」なんていう民謡もありますよ。

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