Category: 春の魚の話をしましょう (page 2 of 5)

サワラ(2015年3月号)

桜鰆という言葉があります。

桜の花の盛りの頃に獲れる鰆を和歌山地方ではこう呼んでいます。

春の盛りに多く出る魚で魚偏に春と書いて鰆の字が生まれました。

四季の字を持つ魚は、春の鰆のほか、夏の旁はなく秋は鰍(かじか・いなだ・どじょう)、冬は鮗。夏が無い代わりにと言っては変ですが暑いという旁があります。鱪です。温かい旁は鰮です。

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血鯛(2014年5月号)

血鯛

今月の「魚の話」は血鯛です。

真鯛の旬は、春と秋の年に2回あるとされていて、産卵期を控えた春先、体色が鮮明な桜色になり、桜の花の咲く頃でもあることから「桜鯛」とか「花見鯛」と呼ばれます。食味の点からも2月後半から4月頃までが春の旬とされます。

チダイの旬は晩春から夏で、マダイの身が痩せている時期と重なるために、この季節にマダイの代わりに使われることも多いのです。とはいうものの、マダイより小型で、大きくなっても40cm位なので、痩せた魚を見たことがないくらい1年を通して旨い魚でもあります。

チダイは姿や形はマダイによく似ています。体色はマダイがどちらかというと沈んだ紅色であるのに対して、派手な紅色です。この色の感じから関東では花鯛といいます。仲間内でも「ハナ」という愛称で呼び合っていましたが。

琉球列島を除く北海道南部以南から朝鮮半島南部まで広い海域に分布しているので、地方名は多い魚です。関西ではエビスダイ、新潟・富山・高知ではコダイ、中国・四国・九州ではチコダイ。

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キス(2013年5月)

キスの話

 

キスは日本全国の沿岸や内湾の砂泥に棲む暖海性の小魚で、南日本に多い魚です。底流し網、底びき網、小型定置網などで漁獲され、船釣りや投げ釣りの対象にもなっています。昭和40年代頃まで、深箱(勿論木製)に、頭を上に斜めに立てられて九州方面から貨車に積まれて沢山のキスが築地に来たものでした。

正式名はシロギス、スズキ目キス科の魚で、英語名は(chu)(冗談です)

キスを表すために、作字「鱚」がありますが、この字は、キスの呼称の語源と関係なく、難訓辞典には「生直」(キ)は接頭語、(ス)は性質が素直で飾り気がないこととでています。キスの姿は、何の飾り気もなく、清楚で性質は温和、味は淡泊で「生直」の字義にピッタリです。単にキスと呼ぶ所は関西以東に多く、関西以西では「キスゴ」と呼ぶ所が多い様です。「ゴ」は魚名語尾です。

キスは夏の季語で、「六月の鱚は絵に描いたものでも食え」と言われたもので、旧暦六月のキスは最高の味がするという俗言です。

釣って良し、食べて良しの魚、まずは釣りの話から。可憐な姿で、引きが強いため、又手軽に楽しめるために人気は抜群です。単にキスという場合はシロギスを意味しますが、「食べたらシロギス、釣ったらアオギス」と言われる位、アオギス釣りは、妙味のある釣りの様でした。月刊「東卸」575号に紹介した通り、戦前まで東京湾の風物詩だった「脚立釣り」は有名でしたが、今は九州の豊後海と中国・四国地方の一部に残っている寂しさです。

広々として砂浜でのキャスティングも気持ちのいいものです。私も一度しか経験がありませんでしたが、小田原で、テトラポットを背に釣りました。釣れたキスが、海岸の砂を塗して上ってくる光景が、未だに忘れられません。「キスの投げ釣り、足で釣れ」という格言の通り、潮上にポイントを移しながら、初めての釣りとしては大釣果を上げた想い出がありました。

キス釣りの外道にトラギスが混じります。トラギスはギンポ科の仲間で、キスとは無関係です。トラギスも夏の季語。

食の話。

キスの話を書こうと思った時、「旨い」という言葉を何回使うか心配だったのですが、いまだに使用していません。この調子では一度位ですむかな。

不味い時がない位、いつ食べても旨い魚だと私は思います。旬は夏です。

優しい姿に似ず、ウロコはざらつくし、腹を割くと腹腔の内面が黒く、ワタが透明な体を通して見えるのを防いでいます。針魚の腹が黒く、腹黒い美人にたとへられるのに、キスを悪くいう人は一人もいないのは?美しい姿と上品な味わいのせいでしょうか。

糸造りの刺身、これが一番とすると二番目は天ぷらでしょうか。天ぷらは頭とウロコとワタだけを取った唐揚もいいです。くせのない淡泊な白身魚ですから、皆さんが喜んで食べていただける魚です。おまけに昆布じめや風干しも。

ホタルイカ(2013年3月号)

蛍烏賊

蛍烏賊は発光するイカとして有名です。富山湾では春先に産卵のために深い海から浮上し、岸近くまで寄ってきたものを定置網で漁獲します。

網を揚げた時に蛍烏賊が発光する景況が観光名物となって、生きたまま座敷に持ち込んで部屋を暗くし、発光を楽しみ、後に踊り食いをさせるところもあります。

胴の長さが6cm程度の小さなイカですが、その名前の通り、蛍と同じく発光器を持ち、青白い光を放ちます。イカのくせにという人もいますが、神秘的なイカに会いたくて、春に訪れる人は後を絶ちません。

ちょっと古い話になりますが、昔はみんなこれをイカの赤ちゃんであると思っていたようです。日清戦争(明治27―28年)の頃まで蛍烏賊は「マツイカ」と呼ばれていました。

当時、蛍烏賊は松の肥料にしていたので、この名が付いたようです。これが蛍烏賊であることが発見されたのは明治38年5月27日の未明。まさに日本海海戦の日です。後に、この日は「海軍記念日」になりました。

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サクラエビ(2012年4月号)

桜エビの巻

桜エビの生態について

四月は桜です。桜の名の付く魚が築地市場に入ってきます。桜鯛・桜蝦(ひかり蝦とも)・桜鱒・桜鯎・桜魚(公魚が岸に寄る初春の季語)、桜烏賊(花烏賊ともいう、桜の咲く頃とれる、産卵のための沿岸近くに来る烏賊をいう)、桜餅、これは魚じゃなかった。四月にはほんのりと桜色した桜エビをとりあげます。

エビの仲間にはクルマエビ類のエビらしい形の遊泳類が多く、イセエビ類のような歩行型も、背腹に平べったいウチワエビのような極端なエビもいます。サクラエビは浮遊性のエビで、体長は4cm前後しか成長しません。東京湾、相模湾、駿河湾、および台湾東方沖に分布していて、昼間は水深200~300mの海中に群れをなしていますが、夜になると20~50mまで浮上し、プランクトンを食べて明け方近くになると深みに戻る性質をもっています。

静岡県の駿河湾は有名な産地で、湾に面した由比、蒲原はサクラエビの代名詞にもなっていて、夜、浮上したサクラエビの群れをアグリ網で漁獲します。3月30日に出船、その晩に漁をして31日に入船、桜エビの解禁です。春の漁は6月26日までで、秋の漁期は10月下旬から12月下旬(秋のエビは頭に子を持っていて黒っぽい)、桜エビの産卵盛期が7~8月で、資源保護のため、年二回、1~3月、7~9月を禁漁期間としています。

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