Tag: アジ

たたき

たたき

毎度!宮内一郎です。

 たたきの季節がやってきました。たたきと言えば鯵と鰹ですが、魚種によって調理法が違います。

鯵のたたきはアジを三枚におろして、包丁の刃でたたいた料理です。鰹のたたきは、節取りをしたカツオの表面を焙って厚めに切り薬味をのせて包丁の腹でたたいて味が染み込みやすくする料理です。

鯵などのたたきは、たたきなますというのを略した言葉です。
本来は漁に出た人が釣った魚をその場で調理して食べたなますのことで、魚を三枚におろして包丁の刃で身をこそげ取り、味噌を加えてたたいて食べたものでした。

膾(なます)とは、本来魚等の生肉を細かく切ったものを言った言葉でしたが、現代ではそれを酢に浸した食品を指すようになったようです。このたたきは、アジに限らず、キス、ハゼ、イワシ、トビウオ等釣れた魚全てに通用する料理です。

たたきは、鯵の食べ方としては最もポピュラーで人気がありますが、家庭で作るとなると意外と少ないようです。是非挑戦してみてください。

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アジ(2011年3月号)

アジの巻

 

旬の先取りで鯵の話です。普通、鯵の旬は夏とされています。魚の旬は一般に産卵期前といわれていて、多くの魚は産卵期前に活発に餌をとって、脂肪等、栄養が貯えられて、旬に旨味が増してきます。鯵の産卵期は二月頃から夏前ですから、三月といえば、鯵の旬の“走り”です。

敢て、この三月に夏が盛りの鯵の話を書こうとしたのか、実は大勢の人が、おいしい鯵に恋焦がれているのです。私の店でゃ一年を通して、おいしくない鯵でも、切らしたことがありませんが、お客さんは少しでも間に合わせに買われて行きます。それ程、鯵は日本人に愛されている魚なのです。

“美味しい鯵を”といって買いにみえるお客さんには、三月まで待って下さいと答えています。鯵という字を見て下さい。魚偏の参と書きます。鯵の字は生臭いという意味で、三月の参は誤りであるという説があります。私は鯵の参は旧暦三月の旬を表す字と信じています。三月下旬から初夏にかけての鯵は産卵を控えて脂ものって、身震いするほと旨かった事を思い出します。これ程までに参の字にこだわって、この稿を書いてます。

「鯵は味なり」という言葉があります。江戸中期の学者で、政治家でもあった新井白石の言で“味”の良さがそのまま「鯵」という魚名になったわけです。

市場には周年出回っていて、なじみの深く、くせがない、いつ食べても旨い魚ですが、晩春から秋の終わり頃までが特に美味しい“旬”です。普通アジといえばマアジの事で、分類上では、アジという魚はいません。アジの仲間にはマアジの他に、ムロアジ、ニシマアジ(ヨーロッパやアフリカ沿岸、地中海に分布していて、日本には冷凍で輸入されて干物に加工されている)等がいて、それぞれにゼイゴとかゼンゴ(稜鱗)と呼んでいる鎧のような硬い鱗が尾の付け根から、側線に沿ってついているのが特徴です。稜鱗の付いていないアジ科の仲間に魳、間八、平政等がいます。

アジは北海道の一部の地域を除いた日本各地で漁獲されますが、主な産地は長崎県、島根県、鳥取県、愛媛県、福岡県です。主な産卵場が九州から東シナ海と考えられていることから、九州の西部が主産地のため西日本の巻網船に限って、満月をはさんで六日間を休漁期間としています。資源保護のため、船員の休養のため、また満月の時、魚がばらけて、魚を獲る効率が悪くなるからで、お月様が丸くなったら市場への入荷量が少なくなることもありますので、覚えておいて下さい。

 

追伸:前号、タイのタイですが、魚を食べ、骨までしゃぶって、初めて鯛の鯛の“出現”みることができるのです。その喜びを味わうためにも、魚を大切に、無駄なく食べて頂く事をお薦めします。前号でお約束しました「タイのタイ」の詳細な作り方については次頁をご参照下さい。