魚の語源 虎魚・鰧の巻

 

何で、よりによってこんな魚の語源を調べなくてはならないかと思う程、広辞苑を引いても、国語辞典を読んでも、いやな言葉が出てきます。調べる前に想像していた通りの“ゴゼ”が、目の前に現れて、今、いやな気分で筆をとっています。広辞苑には「瞽女」三味線を弾き、唄を歌いなどして銭を乞う盲目の女、とあります。

私が虎魚を見て思い出すのが「破壊された顔の持主」と枕によく口にしていた落語家柳亭痴楽です。

汗を拭きながら、一生懸命、高座をつとめていたのを記憶しています。それにしてもこの人はひどい顔をしていました。しかし、顔のひどさは、虎魚の足元にもおよびませんでした。

オニオコゼの語源は「鬼のように醜い容貌の魚」というようです。

「オコゼ」の名は「オコシ、オコジ」として和名抄に記憶されています。辞書によると「オコ」は古語で醜いこと。貌の痴という意味です。笑いに価するほど愚かだともいっています。

オコゼの「ゼ」は「魚名語尾」でアオゼ(青い魚の意味で青鯛)、アカゼ(鰭の赤いアカゼ)、ウボゼ(関西でのイボダイのこと)などの「ゼ」です。

オコゼはオニオコゼ科の魚で、太平洋側は房総から西、日本海側は秋田県以西の沿岸部の砂泥地に生息していて、体色は環境によって変化して深場の魚は赤か黄色がかり、浅場のものは黒っぽいのが多い様です。体には鱗がなく、体はぶよぶよしていて、全長が25cm位になります。「天は二物を与えず」を地でいった魚です。まるで石ころか、海藻か、ゴミと見間違う格好で海底に棲んでいて、小魚をひと飲みにしてしまう習性を持ち、背ビレに毒腺を持った恐ろしい魚ですが、一方、刺身・唐揚げ・天ぷら・椀種・ちり鍋・何れも一級品の食材です。

 

魚の語源 笠子の巻

 

カサゴと名のつくだけでもカサゴ、オニカサゴ、ウッカリカサゴ、アヤメカサゴなど非常に仲間の多い魚です。「磯のカサゴは口ばかり」ということわざがあります。口先ばかりで実行が伴わないことのたとえです。総じて、口が大きく、張り出した背ビレや胸ビレを笠に見たてて名づけられたようです。

私が以前、疣鯛の話の中で疒の魚で可哀想と書きましたが、疒の魚がまだありました。「瘡魚」です。腫物の治るのに従って、その上にできる皮膚を「瘡蓋」といいます。この魚は全体に不明瞭な文様や皮膚を瘡蓋に見たてて「瘡蓋のできているカサゴ」の意味で、「瘡魚」の語源とする説もあります。地方名の顔に関する名が多く、関西ではガシラ、九州ではアラカブ、神奈川のツラアラワズ(面洗わず)、鹿児島のシシ(獅子)。

煮物は絶品、頭やヒレも美味しいので唐揚げもよし!