鱸の巻

 

日本に鈴木という姓は大変多く、三本の指に入る位でしょう。魚の分類上でもスズキ目というグループは一番多く、中でもスズキは魚の代表ともいえる魚です。

スズキで思い出したので先に書いてしまいます。もう50年も前になりますが、私が河岸に入りたての頃、日本橋の魚屋さんへ掛取り(勘定取り)に行った時の話です。店に並んだ魚に名前が付いています。鱸に“鈴木”と、鯖には魚偏にサバとカタカナで。学校出たての私には、何ともえらい社会へ入ったものと思えたのが此の頃でした。

さて、本題の鱸です。

鱸は神代の昔から食べられ、尾翼鱸の名前で古事記にも出ていますし、「万葉集」には「あらたへの藤江の浦に鱸釣る白水郎(漁師)とか見らむ旅ゆく吾を」という柿本人麻呂の歌があります。時代は下って鱸の履歴書には「平清盛」や「徳川将軍家」の食膳にも登場します。

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