Category: 月刊 東卸バックナンバー (page 1 of 19)

初鰹 その壱

初鰹 その壱

毎度!宮内一郎です。

カツオ漁は、ほぼ半年間という長丁場にわたるため、その旬を決めるのは難しいのです・・・・・。

太平洋を広く回遊しているカツオですが、最初に2月頃九州南部に現れるのは1.5~2㎏の子カツオで、尾部が太く徳利の形を思わせるところから 「とっくりかつお」と言われます。

その後3月中旬頃、和歌山県沖に現われるのも、まだ脂ののらないとっくりかつおです。

さらに鎌倉沖に現われる頃になるとカタクチイワシを食べて育った3 ~4㎏の大きさに成長します。徳川時代の江戸で初鰹として人気を集め、考えも及ばない高値を呼んだのがこの鰹です。

江戸では、鎌倉から伊豆にかけての海で獲れたカツオを、その日のうちに売りさばきました。サバと同様に、カツオもいたみの早い魚です。冷蔵技術もなく保冷方法も水を替えるくらいしか、知らない当時にあっては、ただ早く届けることが最善の方法だったのです。

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新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。

 

旧年平成28年は築地の魚市場にとって激動の年でした。

市場の80年振りの移転が、知事の一声で延期になり、どれほどの人が迷惑したことでしょうか。移転は、本年の冬(年末)か翌年の春と噂されていますが、早く決定して欲しいものです。

移転は決まっていませんが、魚市場の「初荷」は1月5日に決まっています。糶場に「初荷旗」が並ぶと、一段と華やかになる一日です。

私が市場に入って以来、欠かすことなく続いている行事の一つです。篠竹という細い青竹に「祝・初荷」と会社名が派手に書かれた紙(昔は布でした)の旗が、入荷した魚たちに添えられます。旗は「仲卸」から「小売店」へ渡され、町の魚屋さんは、車や自転車に「初荷旗」を付けて、築地から店まで、風を切って走る「正月の風物詩」が町のあちらこちらで見られました。

そうそう「初」という言葉ですが、市場では、初荷の他に「初鰹」の他には。滅多に使いません。秋刀魚の場合は、「新さんま」です。

小言幸兵衛より蛇足・・・

「初」の読み方は多く、「しょ」「はじめ」「はつ」「そ」「うい」など。初産は「ういざん」初孫は「はつまご」と読みます。

 

本年もよろしくお願いいたします。

 

 

丸宮商店 宮内一郎

焼き魚(2016年12月号-最終回)

焼き魚

 

今日は焼き魚の話です。

先月が煮だったからではなく、先日、鰆の西京漬を食べた時、焼き魚の話をと思い立った次第です。

今の時期、焼き魚で食べたい魚と言えば、すぐに思い浮かぶのが鰤の照り焼きでしょう。

以前より格段と旨味を増した“はまち”に比べても、この時期の鰤には勝てない気高さがあります。

 

さて、焼き魚の焼き方というと、意外とその数の多さに驚きます。

まず、塩焼き・白焼き(素焼き)・つけ焼き(照り焼き)・粕漬・味噌漬け焼き(西京焼き)・つけ焼き(幽庵焼き)他、雲丹焼き・利休焼き等・・・。

焼く魚の種類はといえば、前述の焼き方を使えば全魚種といって間違いないと思います。

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煮魚(2016年11月号)

煮魚

煮魚が似合う季節になってきました。煮魚にする魚は、白身魚、赤身魚、青背の魚と何でも構いません。一尾魚の尾頭付きでも、切り身でも。

10月初め、一尾魚の煮付の機会に恵まれました。赤鯥の一年魚です。出場所は鳥取といいますから、浜田が産地かと思います。

私の店では、鯵でも鯖でも箱単位では滅多に売れない今日、赤鯥のように変わった魚は、何軒かのお店に小分けにされていきます。体長10㎝位の一年魚です。1尾100g位の赤鯥を4尾御数にと買いました。三枚におろして、刺身か握り寿司にしようか、迷った挙句、煮付に。

赤鯥はウロコを引き、内臓をとり、胸鰭を残して素頭で切り落とします。表身に一本、飾り包丁を入れ、身を返して一本軽く包丁目を入れます。煮汁は、水・醤油・味醂・砂糖で、先は入れません。胸鰭を付けたままの方が見映えもいいし、私の場合、「鯛の鯛(肩甲骨と烏甲骨)」を取る楽しみが残るためでもあります。夫婦でも4尾、骨は8ケとれるはずでしたが、何故か5ケしか残りませんでした。

ここで我流ではありますが魚の煮方を紹介します。白身の魚はくせがなく、淡泊で、味わいがあるので、酒を入れずに味醂を活用すれば美味しく、魚に照りも出ます。魚の持ち味を活かすために、あっさりした味で揚げ煮や沢煮もいいでしょう。

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シタビラメ(2016年10月号)

舌平目

フランス料理で魚を食べようとすると、シタビラメのムニエルをまず思い浮かべるでしょう。今回はシタビラメの生態や特徴など、それに私の家での料理やレシピ等を紹介します。

シタビラメの生態

シタビラメは分類上は、カレイ目ウシノシタ科、ササウシノシタ科の魚です。ウシノシタ科魚類は世界に4属167種、日本に4属17種が分布しています。

この仲間は目が体の左側にあり、表(有眼側)にして腹を下にすると、左側に頭がきます。また、この類は体の先端に口がありません。先端の吻が腹側に回り込んで、そこに口があります。口元に扇状のひげがあり、表面の黒いのが黒舌平目、ひげがなく、茶色っぽいのが赤舌平目です。

いずれも尾がはっきりせず、一体となっていて、背鰭、尾鰭、尻鰭が繋がっています。この形が動物の舌の様に見えるから舌平目と言います。この形ゆえに、靴底・ソールなどと呼ばれています。築地では、というか、私は「敷側」「下敷」と舌平目を呼んでいました。

砂泥底の浅い海に棲み、普通底引き網・定置網で漁獲されます。淡泊な味で、夏から秋が旬とされますが、1年を通してまず美味しい魚です。味は赤舌平目が上といいますが、私には〚赤と黒〛とも味はスタンダードだと思っています。

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