愛魚女の巻

 

漢字で鮎並とも当て字に書きますが、鮎並とは“アユナミに旨い”ということでしょうか。見た目では大して似てないし、味の点では鮎よりも上と私は思いますが。

名前の愛魚女の由来はアユのように縄張りを持っている事で「鮎並」が転訛したともいわれますが、愛魚女とか、「シンジョ」「寝所」とか「ネウ」「寝魚」とかの方言は、意味深な言葉ですが、アイナメの習性を実によく現していてると思います。

北海道から九州、ほとんど日本各地に分布している魚で、海藻の中や岩礁地帯に棲んでいて、しかも岩礁の間にじっと隠れている魚です。この仕草が「寝魚」の語源と思われます。

釣りの対象漁として人気の高い魚で、船釣り、投げ釣り、堤防釣りと色々な釣り方で楽しむことができますが、私は40年程前に義父に連れられて三浦海岸へよく通った思い出があります。二人っきりの「仕立て」で、義父にいただいた「東作」の竿で五目釣りを楽しんだものでした。

特に愛魚女釣りは、アイナメ独特の釣り方で人気が高かったブラクリ仕掛けで、ナツメ型のオモリに短いハリスと丸セイゴバリが付いたもので、オモリに塗られた赤い色がアイナメを誘うといわれ、この仕掛けが底に着く際にアタる事が多く、頭を横に振る独特のブルブルッというアタリに、病みつきになってしまいました。この釣りは、早合わせが禁物で、私の性分に合っていたのかもしれません。

愛魚女が旨い季節になりましたね。春先から初夏にかけてが旬といわれていますが、前述の通り日本列島各地で獲れる魚ですので、地方名、方言の多い事で有名です。北海道では「アブラコ」、関西では「アブラメ」、東北では「ネウオ」、長崎辺りでは「ヤスリ」等。

食べ方としては、今の時期(夏前)洗いが一番でしょうが、刺身、煮付け、焼き物、唐揚げなど何にしても旨い魚です。特に火を使う料理、焼く、煮る、揚げる料理は調味料の配合など味付で美味しさに大きく差が付く経験を必要とする仕事ですから、台所を預る主夫(夫)は、子供達にも味を伝える責任を!

アイナメは、カサゴ目アイナメ科の魚で体色は淡褐色に見えるものが多いのですが、黄褐色、暗緑色など様々で、生息場所によって体色が異なります。アイナメ科の魚に「」がいます。漢字で書くと美しい魚に見えますが、生の魚を見ると、ちょっとガッカリします。干物にすると人気抜群、ダブルハット!(二度ビックリ)。愛魚女とは型が良く似ています。アイナメの尾ビレは垂直に切れていて、ホッケの後縁は二又に深く切れ込んでいます。

シマボッケとかトラボッケと呼ばれている干物の本名は「キタノホッケ」です。美味しい干物には、やっぱり白いご飯がよく合いますね。