スルメイカ②

 

前回ではイカとタコの違いを、イカには胴体の後ろにヒレが付いている事と、イカには触腕と呼ばれる長い腕が二本余分(?)についている事を書きました。何でも例外が有るようですが、“イカの足は10本、タコの足は8本”が正解のようです。

まだ違いが二つあります。一つは吸盤です。イカの吸盤の中には、プラスチックのような、硬くない小さなトゲトゲのついている丸い輪が入っているのを記憶していますか?指で足を扱くとポロポロ取れます。この「ワッカ」を角質環といいます。タコの吸盤は筋肉質で大きく、食べても旨い「イボ、イボ」ですが、この「輪」は付いていません。角質環の「有」「無」がイカとタコの違いです。

それに寿命です。昔はよく分からなかったイカの寿命が、最近の研究で解明されました。イカの頭の中にある平衡石と呼ばれる大きさわずか1ミリメートル足らずの炭酸カルシウムの結晶です。この石を研磨して、顕微鏡で拡大すると、木の年輪のような輪紋がみえてきます。この平衡石は魚類の耳石に相当するもので、輪紋が一日一本形成される日周輪であることがスルメイカでも確認されたそうです。調査の結果、日周輪が365本を超えることなく、スルメイカの一生が一年間であることが確定しました。この日周輪が何本あるかを数え、イカを獲った月日から輪数分を差し引けば、生後何日たったのか、スルメイカの日齢がわかります。タコの寿命は約三、四年です。

平衡石の研究は、発生時期の推定ばかりではなく、スルメイカの絶対的な時間がかかることによって、成長を正確に押えて、資源増加の研究に結びつくのではないでしょうか。

難しい話はこれ位にして。

スルメイカの胴体は横には裂けても、縦には裂けない、加熱すると表の皮を内側にして丸まる、などの特徴があります。これはイカの表皮や筋肉が特殊な組織構造をもっているためで、スルメイカの表皮は四層からなっています。一層から三層目の皮は胴体を横に走り、四層目の皮は繊維が頭から足にかけて縦方向に走っています。イカの胴肉を加熱すると表皮を内側にして丸まるのは、この繊維が収縮するためです。またイカの皮を剥くことのできるのは一層目と二層目で、三層目と四層目は剥きにくく、無理に剥がすと身までも剥れてしまいます。

イカを加熱する場合、松笠とか鹿の子といった包丁使いで、切り込みを入れて料理を引き立たせるのも、イカの繊維を断ち切る方法の一つです。

イカが美味しくなってきました。イカの塩辛を是非作ってみて下さい。塩辛は発酵を得て初めて生まれるものですから、容器を殺菌してから入れること。そして毎日清潔な箸で混ぜることがコツです。

干したスルメイカについても書きたかったのですが紙面の都合で後日に。