最近の話です。朝刊のチラシにスーパーの広告がありました。鰆(狭腰)の干物が写真入で載っていました。赤身の魚以外なら殆どの魚が干物になると思っていましたが、迂闊にも鰆の干物は今まで気が付きませんでした。余程以前から造られていたそうですが、東京ではそれ程人気がないそうでほっとしている所です。このような事柄が身近にあったので、干物屋さんに叱られるかもしれませんが、家庭に干物を作っていただこうと書き始めました。
食べ物の水分を除いて保存することは、昔から人間の知恵として行われてきました。事実、太陽の光に当たることによって、ビタミンDができ、蛋白質がアミノ酸となるため、生のときとは違ったおいしさを持つようになります。干すことで魚肉の水分が減少し、旨味成分が濃くなるので味を良くします。生で食べるより塩干しにした方が断然おいしくなる魚の代表は鯵でしょう。今、市場に入荷する魚で干物に向いている魚といえば、飛魚・魳など。前に述べましたが赤身の鰯は干物よりみりん干しのほうがいいでしょう。鯵の開き方は腹開きが関東では主流です。開いた時に中骨にやゝ身を付けて、骨が見えない位に開きます。中骨の上の肉は乾きの良さもあって、骨ばなれもよく、おいしいものです。
釣りが好きな人がいれば釣りたての魚が一番ですが、鮮度の良い魚がおいしさの条件の一つです。日中の気温が25℃前後、風が強く当たることも干物をおいしくします。直射日光を当てる魚油が酸化するという方もいますが、私はお日様に二時間くらい当てた方がいいと思います。飛魚や魳は頭を残した背開きが一般的ですが、私の家では頭は取って金串を指し、ヒモで物干し竿に吊るします。以前、無造作に、ベランダで鰯のみりん干しを作ったところ、鳥に三匹取られたので、金串を使い始めました。最近の干物は塩を少なくして甘く作りますので、たくさん作ったときは必ず冷凍庫にしまいましょう。干物を焼くときにはお酒をふりかけてから。旨味が増して、一層おいしく召し上がることができますよ。

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