細長い魚の巻②

見分け方の難しい魚の話を始めたつもりが、細長い魚の紹介になってしまいました。前回、鰻と穴子の違い、鱧とすず鱧の見分け方などを説明しましたので、今月はまず“太刀魚”です。

体は扁平で長く銀色で、太刀に似ているから、“太刀魚”、昼間は縦になって海中を泳いでいるから“立ち魚”どちらも納得の名付け方です。春から夏にかけてが旬ですが、俳句歳時記の季語では秋で、傍題(補足的な題目・サブタイトル)に“たちのうお”“たち”とあります。たちのうおで想い出します。父がおかずに太刀魚を持ってきますと、「まぁ!たちのうお!!」と喜んだ母の顔を。我が家では太刀魚の照り焼きで随分頂きました。大きくなるまでたちのうおの名前で。市場では“タチ”で通用しています。この魚、背鰭が一つですが、これを支える担鰭骨が、長く鋭いものですから調理するときや食べる時は十分注意して下さい。

それに、怖いのは鋭い歯です。太刀魚と鯥の歯で怪我をしないヤツは魚屋ぢゃねーと言われる位、血が流れています。

太刀魚は幅広く、平べったく、銀色をしていて太刀に見えるので、昔からサーベルとも市場で呼ばれていました。太刀魚には鱗がなく、銀箔のグアニン質が体の表面を覆っています。以前はこれを集めて、セルロイドを溶かした液に混ぜ合わせ、ガラス玉に塗ったものが模造真珠でした。日本各地沿岸に生息し、旬の夏以外でも旨い魚と思いますが、関東ではあまり人気がないのが気になります。私も久里浜から太刀魚専門の釣船で何度か釣りに出ましたが、晴れた空に釣り上げた太刀魚の踊る姿は、忘れられない気持ち良さです。白身の魚で、大きいものは脂肪もあって骨離れもよく、刺身もいいが、やはり照り焼き、塩焼き、バター焼きがいいですね。

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