新子と小肌の鰶

鰶はニシンやマイワシに似ていますが、背鰭の最後が長く伸びているので見分けがつきやすく、鰓ぶたの後ろに黒い斑紋が一つ、身体の上半分には小さな黒い斑紋が並んでいるのが特徴です。

関東ではシンコ・コハダ・ナガツミ・コノシロと成長につれて名前を変える魚で、関東地方では体の小さいものほど好まれますので、新子の話から始めましょう。

毎年、6月の終わりから7月の初めに築地に入荷する新子は、100g単位でビニールの袋に水と共に入れられて送られてきます。1袋に30尾以上入っています。暑い夏限定で出てくる新子です。

高級すし店などでは、小さな新子を3尾ほどつけて握ります。もっと高級?なすし店では、1貫にもっと多くの新子がつく場合もあるようです。

築地では、時々ビックリするような高値が魚につけられたりします。今年も先日、新子にキロ10万円の値がついたと聞きました。江戸末期から、江戸っ子はこれを好み、走りの新子に高い金を払っては握りを食ったものだそうです。

一息ついて、小肌の話をしましょう。

小肌の酢締めは江戸前寿司の光り物の代表的なタネです。かつても今も江戸前の海で獲れ、丁寧な仕事が施された小肌の握りは、その姿と酢の酸味が一体となって、江戸前の握り寿司の最高峰の種と言っていいでしょう。

新潟県・松島湾から南の海に分布して海藻の多い所に棲む魚で、体長10cm位を小肌といいます。関西ではツナシと呼んでいる他、ベットオ、ヨナ、モゴ、ニブゴリンなど語意不明の地方名の多い魚でもあります。

小肌は産地をずらせば一年中、いつでも食べられる、卵焼きと同じに安い寿司種の代表ですが、“小鰭の粟漬”は正月のおせち料理の一つで、季語にもなっています。

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