Category: 春の魚の話をしましょう (page 3 of 5)

カツオ(2012年3月号)

カツオの巻

西国に鮭なく、東国に真名鰹なしという言葉があります。鮭は北国の魚で、真名鰹は東日本では獲れない、即ち本州中部から瀬戸内海、東シナ海に生息する魚です。

タイと名が付く魚にタイではないものが多いように、真名鰹もカツオとは縁遠いマナカツオ科の魚ですが、漁期や味の良いところがカツオに似ているので名付けたともいわれます。

今月はカツオの名の付いた魚を選んでみました。

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メバル(2011年4月号)

このたびの東北関東大震災並びに福島第一原発事故により被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

漁業関係の被害については「国難」とはいえ壊滅状態の現状に「ガンバって、立ち直って!」と声をかけるだけですが、一日でも早く復興されます様にご祈念いたします。

一方、福島第一原発事故による出荷制限がされた農産物並びに茨城県の加工前の牛乳等、放射能検査の結果「直ちには健康に影響がない」とか「ねんのため食べないでほしい」といった曖昧な言葉ではなく、しっかりした、正確な情報が望まれます。3月30日現在の情報では原発放水口付近の海水で、国の基準値の4385倍の放射性物質が検出された様で、魚等への影響が心配されています。

「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」風評被害の恐ろしさを思う今日です。

 

眼張の巻

 

めばる煮て こころをわかつ皿二つ 曹人

春告魚の名が、ニシンからメバルに移って久しくなります。俳句の季語では春ですが、一年中、いつ食べても味の落ちない魚で、特に早春から初夏頃までが美味しい時期ですので、一度は御賞味下さい。二番のきくこと受け合いで、また召し上がって下さい。煮て、焼いて、揚げて、鍋にも良しです。市場ではアカメバル、クロメバルと色で区別して呼ぶことがありますが、棲息環境の違いによる体色の変化にすぎないと思われています。比較的浅場に棲むものほどクロメバルが多く、深場に棲むほどほど色が赤くなるようです。クロメバルがなかでも一番美味しいとされて、市場への入荷量も少なかったこともあって値段も幾分高い時もあったのですが、鮮度や型が良ければ他のメバルでも、それ程、味に差はないと思います。

春の気配が感じられると、待ち焦がれていたメバル釣りが始まります。私も若い頃、羽田沖へ夜釣りに出掛けました。体長15cm位、手頃のサイズのクロメバルを釣ったのを覚えています。相模湾での船釣りでは、五匹位、一荷で釣れて、その魚信がたまらない魅力で、何度か通ったものでした。メバルは常に二、三十尾が群れて、底の根に行儀よく並んで行動しているので、一尾かかってもあわてずに、追い食いさせれば枝鉤全部にかかってくることも珍しくないのです。

魚類の多くは卵を産む「卵生」ですが、稚魚の状態で生み出される「胎生」の魚にはメバルや一部のサメ、ウミタナゴが知られています。

メバルの戸籍はカサゴ目カサゴ亜目フサカサゴ科で、メバル、クロソイ、キツネメバル、アコウダイ、キチジ、カサゴ、オニカサゴなど多くの美味しい魚が仲間にいますが、頭部には棘や骨板が発達して、多くの種類が背鰭、尻鰭、腹鰭の棘条に毒腺をもっているので御用心、御用心。

赤眼張 縦列駐車 鯉幟

伊栄井

アジ(2011年3月号)

アジの巻

 

旬の先取りで鯵の話です。普通、鯵の旬は夏とされています。魚の旬は一般に産卵期前といわれていて、多くの魚は産卵期前に活発に餌をとって、脂肪等、栄養が貯えられて、旬に旨味が増してきます。鯵の産卵期は二月頃から夏前ですから、三月といえば、鯵の旬の“走り”です。

敢て、この三月に夏が盛りの鯵の話を書こうとしたのか、実は大勢の人が、おいしい鯵に恋焦がれているのです。私の店でゃ一年を通して、おいしくない鯵でも、切らしたことがありませんが、お客さんは少しでも間に合わせに買われて行きます。それ程、鯵は日本人に愛されている魚なのです。

“美味しい鯵を”といって買いにみえるお客さんには、三月まで待って下さいと答えています。鯵という字を見て下さい。魚偏の参と書きます。鯵の字は生臭いという意味で、三月の参は誤りであるという説があります。私は鯵の参は旧暦三月の旬を表す字と信じています。三月下旬から初夏にかけての鯵は産卵を控えて脂ものって、身震いするほと旨かった事を思い出します。これ程までに参の字にこだわって、この稿を書いてます。

「鯵は味なり」という言葉があります。江戸中期の学者で、政治家でもあった新井白石の言で“味”の良さがそのまま「鯵」という魚名になったわけです。

市場には周年出回っていて、なじみの深く、くせがない、いつ食べても旨い魚ですが、晩春から秋の終わり頃までが特に美味しい“旬”です。普通アジといえばマアジの事で、分類上では、アジという魚はいません。アジの仲間にはマアジの他に、ムロアジ、ニシマアジ(ヨーロッパやアフリカ沿岸、地中海に分布していて、日本には冷凍で輸入されて干物に加工されている)等がいて、それぞれにゼイゴとかゼンゴ(稜鱗)と呼んでいる鎧のような硬い鱗が尾の付け根から、側線に沿ってついているのが特徴です。稜鱗の付いていないアジ科の仲間に魳、間八、平政等がいます。

アジは北海道の一部の地域を除いた日本各地で漁獲されますが、主な産地は長崎県、島根県、鳥取県、愛媛県、福岡県です。主な産卵場が九州から東シナ海と考えられていることから、九州の西部が主産地のため西日本の巻網船に限って、満月をはさんで六日間を休漁期間としています。資源保護のため、船員の休養のため、また満月の時、魚がばらけて、魚を獲る効率が悪くなるからで、お月様が丸くなったら市場への入荷量が少なくなることもありますので、覚えておいて下さい。

 

追伸:前号、タイのタイですが、魚を食べ、骨までしゃぶって、初めて鯛の鯛の“出現”みることができるのです。その喜びを味わうためにも、魚を大切に、無駄なく食べて頂く事をお薦めします。前号でお約束しました「タイのタイ」の詳細な作り方については次頁をご参照下さい。

タイのタイ(2011年3月号)

鯛の鯛

「タイのタイ」のような乾燥した骨の作り方には、水や温水に漬ける、煮たり熱湯をかけたりする、薬品を使うなど様々な方法がありますが、ここでは、排水パイプ用洗浄剤を使う簡単な方法を紹介します。


≪用意するもの≫

排水パイプ用洗浄液(パイプスルー)、容器(小さいバケツ)、ピンセット(または、竹ぐし、つまうようじ、歯ブラシなど)、ビニール手袋。

≪作り方≫

①魚(生、煮付け、焼魚など)の胸ビレの部分(かま)をはずす。ピンセットでていねいに肉をとる。

②「タイのタイ」(肩胛骨と鳥口骨)をはずす。2つの骨がはずれないように注意。他の骨がついていてもかまいません。後ではずせます。

③容器に30~40℃位のお湯を入れ、パイプスルーを溶かします。分量の目安は、骨の大きさが5cm位なら、600ccのお湯にパイプスルー10g位。骨を入れ、少し泡立つ程度です。

④簡単に水洗いして、新しいパイプスルーを液に漬けます。きれいになるまで、③と④を繰り返します。あまり何度も繰り返すと2つの骨ははずれてしまうので、1、2回程度。

⑤きれいになった後、パイプスルーの液から骨を取り出して、容器の中でよく水洗いします。流水なら2~3時間(少しづつ)、流水でなければ時々水を換えながら半日位。

⑥水洗いが終わったら、ペーパータオルで水分をふき取ります。

⑦日陰で完全に乾燥させて完成です。

⑧プラスチック容器に入れ、防虫剤と共に保存します。


≪注意事項≫

・排水パイプ用洗剤を使うときには必ずビニール手袋で。

・もし2つの骨がはずれたら、⑦のあと接着剤でくっつけます。

・排水パイプ用洗剤を使うと魚の臭いがとれると同時に漂白と除菌もできます。

・この方法は魚以外の動物の骨にも応用できます。


【参考資料】

伊藤恵夫氏「排水パイプ用洗剤を利用した小動物骨格標本作成法」化石研究会会誌

おさかな普及センター資料館「おさかな情報」

アイナメ(2010年5月号)

愛魚女の巻

 

漢字で鮎並とも当て字に書きますが、鮎並とは“アユナミに旨い”ということでしょうか。見た目では大して似てないし、味の点では鮎よりも上と私は思いますが。

名前の愛魚女の由来はアユのように縄張りを持っている事で「鮎並」が転訛したともいわれますが、愛魚女とか、「シンジョ」「寝所」とか「ネウ」「寝魚」とかの方言は、意味深な言葉ですが、アイナメの習性を実によく現していてると思います。

北海道から九州、ほとんど日本各地に分布している魚で、海藻の中や岩礁地帯に棲んでいて、しかも岩礁の間にじっと隠れている魚です。この仕草が「寝魚」の語源と思われます。

釣りの対象漁として人気の高い魚で、船釣り、投げ釣り、堤防釣りと色々な釣り方で楽しむことができますが、私は40年程前に義父に連れられて三浦海岸へよく通った思い出があります。二人っきりの「仕立て」で、義父にいただいた「東作」の竿で五目釣りを楽しんだものでした。

特に愛魚女釣りは、アイナメ独特の釣り方で人気が高かったブラクリ仕掛けで、ナツメ型のオモリに短いハリスと丸セイゴバリが付いたもので、オモリに塗られた赤い色がアイナメを誘うといわれ、この仕掛けが底に着く際にアタる事が多く、頭を横に振る独特のブルブルッというアタリに、病みつきになってしまいました。この釣りは、早合わせが禁物で、私の性分に合っていたのかもしれません。

愛魚女が旨い季節になりましたね。春先から初夏にかけてが旬といわれていますが、前述の通り日本列島各地で獲れる魚ですので、地方名、方言の多い事で有名です。北海道では「アブラコ」、関西では「アブラメ」、東北では「ネウオ」、長崎辺りでは「ヤスリ」等。

食べ方としては、今の時期(夏前)洗いが一番でしょうが、刺身、煮付け、焼き物、唐揚げなど何にしても旨い魚です。特に火を使う料理、焼く、煮る、揚げる料理は調味料の配合など味付で美味しさに大きく差が付く経験を必要とする仕事ですから、台所を預る主夫(夫)は、子供達にも味を伝える責任を!

アイナメは、カサゴ目アイナメ科の魚で体色は淡褐色に見えるものが多いのですが、黄褐色、暗緑色など様々で、生息場所によって体色が異なります。アイナメ科の魚に「」がいます。漢字で書くと美しい魚に見えますが、生の魚を見ると、ちょっとガッカリします。干物にすると人気抜群、ダブルハット!(二度ビックリ)。愛魚女とは型が良く似ています。アイナメの尾ビレは垂直に切れていて、ホッケの後縁は二又に深く切れ込んでいます。

シマボッケとかトラボッケと呼ばれている干物の本名は「キタノホッケ」です。美味しい干物には、やっぱり白いご飯がよく合いますね。

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