魚の王様といえば、誰でもがタイの名をあげるでしょう。“花は桜木、人は武士、柱は桧、魚は鯛、小袖はもみじ、花はみよしの”
年の始めに、鯛を召し上がった方も多いと思います。
刺身、焼物、鍋、煮物、別に魚体の部分の旨さを順に言いあらわした言葉に「アタマ、スナズリ、カマ、背肉」があります。
スナズリとは、魚の腹の下の部分、砂に擦られるほどの所で、ハラスともいわれています。鮪の大トロがこの部分に当ります。
今回はカマの部分の話です。魚の胸ビレのつけ根の部分、草刈鎌に似ているのでカマ、特にタイ、ブリ、カンパチなどの魚が胸ビレを働かせて行動する、その筋肉が発達して旨いのは当然で、ブリのカマの塩焼きは、何物にも替えられない旨さです。
タイのカマを丁寧に食べてゆくと、中に“タイのタイ”という鯛の形に似た骨が出てきます。鯛の体の左右についていますから相似形の骨が二つ出てきます。このほかにも鼻の所に鯛石、大竜、頭の骨の付近には「三ツ道具」と呼ばれる、農耕具の鎌、鍬、鋤に似た骨が、尾のそばには鳴門骨、竹馬、鍬形などの名前がついた骨があり、昔から食べられていた鯛に、想い入れがうかがい知ることができます。今日お話しをする「鯛中鯛」は、正式には「鯛の鯛中鯛」「鯛のタイのタイ」と呼ぶべきで、イワシにはイワシの「鰯の鰯」、サバにはサバの「鯖の鯖」という骨があるわけです。前年9月号の金目鯛の写真の説明は「金目鯛と金目鯛」と訂正させていただきます。
江戸時代後期には、先程お話しをした「三ツ道具」を含めて、全体の骨格の他に「鯛の九ツ道具」と呼ばれる小骨があって、様々な“もの”に見立てて楽しんでいたようです。。
「タイのタイ」を持っているだけで幸せが来るというのに「鯛の九ツ道具」を持っていると「物には不自由しないし、持つと幸せなる」と昔からいわれているといっています。
タイのタイは、魚市場や料亭などでは昔からよく知られていましたが、一般にはあまり馴染みがありませんでした。最近ではマスコミなどに取り上げられることもあって話題にもなっています。見たり、聞いたりしただけでは幸せはやってきません。タイのタイを作ってみましょう。
先ず、鯛を食べることから始めて下さい。魚市場の中では鯵や鰯よりキロ単価が安い場合が往々にしてあります。養殖物でも良いでしょう。1kg前後の、あまり大きくないものを買い求めて、身は生でも、頭とカマの部分は煮るか焼くかで火を通して食卓へ。タイのタイはカマの所の胸ビレの下についている骨で、肩胛骨と烏口骨からできています。
肩胛骨が頭で、神経が通る穴が眼ということです。
財布に入れておくとお金が貯まるとも、着物が増えるというのでタンスにしまっておく人もいます。
店に置くと魚が溜まるからおすすめしません。
【参考資料】
おさかな普及資料館「おさかな情報No5」
※タイのタイの詳しい作り方は次号に掲載予定。