Category: 夏の魚の話をしましょう (page 2 of 6)

シイラ(2015年8月)

鰆“鱪”鰍鮗

魚夏この字、何と読みますか?

漢和辞典には載っていません。無いのです。

魚偏に春は鰆―さわら、秋は鰍―どじょう・いなだ、冬は鮗―このしろ、四季があるのだら、魚偏に夏があって当たり前という考え方は素直過ぎますか?造り忘れたのかな。

考えれば考えるほどおかしいと思いませんか。寝られなくなっちゃった。その代わりと言ってはなんですが、暑い盛りに多く獲れるから“鱪”という字をシイラに当てた様です。

考え序に語源はといいますと、この魚の体皮が堅く、薄身で肉が少ないことから、米麦の結実しない籾のことを“粃”の意味であると受け取られているようです。

シイラは全世界の暖海のやや沖合の表層に生息しています。日本の沿岸では暖流の影響を受ける地域で夏から秋に普通に見られます。

まず魚体。成長すると1.8mにもなる大型魚で、細長い体の背縁と腹縁はほぼ直線状で、強く側扁(左右に押しつぶされたような形)します。額の輪郭は雌雄で大きく異なり、雄の成魚の額は極端なおでこで、成長と共に頭でっかちに変わるのが特徴です。雌はごく普通の丸みを帯びた顔立ち。

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メゴチ(2015年7月号)

雌鯒

7月は雌鯒の話です。

6月は鯒の話で、今月は雌鯒、コチとメゴチの関係は親子?親戚?

名前の形も似ていますが、分類学上は結構離れているのです。

鯒の時にも書きましたが、コチはコチ科、メゴチはネズッポ科の魚です。

ハゼやキス釣りの外道としてよく釣れ、親しまれているメゴチの名はネズッポ類の総称で、世界中の暖海に約18属130種が知られ、日本には35種が分布しています。

スズキ目ネズッポ科の仲間には、もっともふつうに見られる鼠鯒や滑鯒、鳶滑がいて、体形や体色がいずれもよく似ているため、種の識別は難しいが、鰭の模様や形に注意するとわかるものが多いです。

その殆どが日本海では新潟県、太平洋では仙台湾以南の沿岸域に分布しているので地方名も多く、面白い名だけでもウシロデ、ノドクサリ、ガッチョ、ヨダレゴチ等どんな名前を付けられようが、旨ければいいというのがこの魚の真骨頂で、天ぷらにすると美味なものが多く天下逸品といえます。

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コチ(2015年6月号)

今月の魚は鯒です。

魚河岸の人、100人に聞きました。

今、流行のクイズです。

Q.鯒の名前を知っている人(答えは私の独断の想像です)

A.100人中 95人

Q.鯒を見た事ある人

A.100人中 70人

Q.鯒を食べた事のある人

A.100人中 20人

名前は知っているけれど、食べた事はないという人が多いと私は予想しました。

今から10年ほど前までの築地市場は、或る程度業種別の商いがなされていたと思います。だんだん業種の垣根が外されて、お客さんの要望もあって、どこの店でも他業種の魚を扱うようになりました。私の店でも、その頃から活け物を扱って、活の鯒を商品として置くことになります。それまでの50年、鮮魚を扱っていて鯒を商いにした経験は年に10日とないと記憶しています。

前置きが長くなりましたが、特種の、活け物の領域から出ない魚だったのです。鯒は。

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アマダイ(2014年10月号)

尼鯛

最近、築地の仲卸に求められることが変化しているようです。料理人が手間を惜しむようになったのでしょうか。残念でなりません。さて、何が変わったかというと、加工の要望が増えてきたのですね。対応できる施設のある仲卸は半身、節(4分の1)まで下ろしているようです。

“世の中変わってきたなぁ”と感じてしまいます。

話はこれからです。

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コノシロ(2014年8月)

新子と小肌の鰶

鰶はニシンやマイワシに似ていますが、背鰭の最後が長く伸びているので見分けがつきやすく、鰓ぶたの後ろに黒い斑紋が一つ、身体の上半分には小さな黒い斑紋が並んでいるのが特徴です。

関東ではシンコ・コハダ・ナガツミ・コノシロと成長につれて名前を変える魚で、関東地方では体の小さいものほど好まれますので、新子の話から始めましょう。

毎年、6月の終わりから7月の初めに築地に入荷する新子は、100g単位でビニールの袋に水と共に入れられて送られてきます。1袋に30尾以上入っています。暑い夏限定で出てくる新子です。

高級すし店などでは、小さな新子を3尾ほどつけて握ります。もっと高級?なすし店では、1貫にもっと多くの新子がつく場合もあるようです。

築地では、時々ビックリするような高値が魚につけられたりします。今年も先日、新子にキロ10万円の値がついたと聞きました。江戸末期から、江戸っ子はこれを好み、走りの新子に高い金を払っては握りを食ったものだそうです。

一息ついて、小肌の話をしましょう。

小肌の酢締めは江戸前寿司の光り物の代表的なタネです。かつても今も江戸前の海で獲れ、丁寧な仕事が施された小肌の握りは、その姿と酢の酸味が一体となって、江戸前の握り寿司の最高峰の種と言っていいでしょう。

新潟県・松島湾から南の海に分布して海藻の多い所に棲む魚で、体長10cm位を小肌といいます。関西ではツナシと呼んでいる他、ベットオ、ヨナ、モゴ、ニブゴリンなど語意不明の地方名の多い魚でもあります。

小肌は産地をずらせば一年中、いつでも食べられる、卵焼きと同じに安い寿司種の代表ですが、“小鰭の粟漬”は正月のおせち料理の一つで、季語にもなっています。

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